2011年5月29日日曜日

説教集A年:2008年4月27日復活節第6主日(三ケ日) 

第1朗読 使徒言行録 8章5~8、14~17節
第2朗読 ペトロの手紙1 3章15~18節
福音朗読 ヨハネによる福音書 14章15~21節


① ご存じのように、カトリック教会は41年前の1967年以来復活節第6主日を「世界広報の日」として、新聞・雑誌・テレビ・ラジオ・映画等々のマスメディアが、人々に必要な真実を正しく伝えて人類の平和と福祉に一層良く貢献するように祈る日としています。現代には人の心を汚染するマスコミの力が大きくなっていますので、それが偏狭な危険思想などにゆがめられたり牛耳られたりすることのないように、神による導きと助けが望まれています。それで、本日のミサ聖祭はこの目的のため、神からの豊かな恵みと祝福を願い求めてお献げ致したいと思います。ご一緒にお祈り下さい。

② 本日の第一朗読は、使徒たちからステファノたちと一緒に使徒的奉仕職に叙階されたフィリッポの、サマリア布教について伝えています。サマリア人たちはフィリッポがなす数々の奇跡的癒しを見聞きして、その説教にも耳を傾けるようになり、受洗してキリスト信者になったようです。主イエスもなさったように、病人を癒す奇跡など神の現存と愛を証しする慈善活動は、宣教のために大切です。しかし、それは神の現存と愛を証しするためであることを忘れてはならないと思います。主イエスは、単なるこの世的人助けの社会事業として癒しの奇跡をなさったのではありません。そんな社会活動は、神を信じない人たちもやっています。エルサレムにいた使徒たちは、多くのサマリア人が受洗したことを聞いて、ペトロとヨハネをサマリアの信徒団の所に送りました。サマリア人たちは洗礼を受けただけで、まだ堅信の秘跡による聖霊を受けていなかったからでしょう。二人の使徒がその人たちの上に手を置いて、聖霊を受けるようにと祈ると、聖霊は彼らの上に降り、それは、例えば異言を話すなどの何らかの目に見える形でその場にいた人たちに感じられたようです。

③ この話から察すると、使徒たちは按手によってステファノたち七人を司祭職に叙階しましたが、聖霊の賜物を注ぐ堅信の秘跡を授ける権限はまだ自分たちの所に保留していたようです。その使徒時代からの伝統でしょうか、第二バチカン公会議後に司祭たちでも授けることができるように変革された堅信の秘跡は、それまでは司教が授ける秘跡とされていました。私たちは皆その公会議前からの信者ですので、教区長から堅信の秘跡を受けましたが、この古い伝統は、信徒たちが個々の小教区を超えて教区全体を一つの信徒団として意識し、各人が司教の呼びかけの下に心を広げて幅広く相互に協力し合うのを優位にしていたかも知れません。しかし、近年ではインターネットや携帯電話等々の普及で、各人が自分の都合や好みを第一にする生活の個人主義が信徒団の中にも圧倒的に広まりつつあり、信徒団のまとまりが弱体化しているように見えますが、いかがなものでしょうか。

④ 本日の第二朗読の中で使徒ペトロは、「心の中でキリストを主と崇めなさい。云々」と述べていますが、この勧めは、生き方の個人主義が普及しつつある現代社会の流れに生きる私たちにとって大切だと思います。国家も会社も家庭も古来の温かい家族的共同体精神を失って、内的に崩壊しつつあるように見えるからです。こういう時代には、もはや死ぬことのない霊的な命に復活し、目に見えないながらも世の終わりまで私たちの中に現存して働いて下さる主イエスを、各人がそれぞれ自分の心の主と崇め、主と内的にしっかりと結ばれて生活することが、現代流行の個人主義の孤独感やあらゆる困難・不安に耐えて安らかに生きる道だと信じます。

⑤ 本日の福音に読まれる主のお言葉は、最後の晩餐の席で弟子たちに語られた話ですが、心の拠り所を失って悩み苦しむ人の多い現代の精神的危機の下に生活する、私たちに対する御言葉でもあると思います。主はおっしゃいます。「私のおきてを受け入れ、それを守る人は私を愛する者である。私を愛する人は、私の父に愛される。私もその人を愛して、その人に私自身を現す」と。主がお定めになった「私が愛したように互いに愛し合いなさい」という、この無償の献身的愛のおきて一つを忠実に守り抜くなら、外の世界がどのように変わろうとも心配いりません。私たちは神にも主イエスにも愛されて、逞しく生き抜くことができます。主はまたおっしゃいます。「私は父にお願いしよう。父は別の弁護者を派遣して、永遠にあなた方と一緒にいるようにして下さる。この方は、真理の霊である」と。すなわち、主を愛しそのおきてを守る魂の中には、神の愛の霊・聖霊も天の御父から派遣されて、永遠に住んで下さり、いわば各人の魂を「聖霊の神殿」として下さるのです。主のこのお言葉を堅く信じて、大きな希望と喜びの内に生活するよう心がけましょう。